何体かレッサードラゴンやオーガを倒し、ダンジョンを徘徊していると初めて通路ではなく扉のある部屋を見かけた。こういった部屋には何かしらの魔の力が宿ったアイテムがあるのだが、それに惹かれた強い魔物がいるため注意が必要だ。
 ゆっくり扉を開けて中をみるとそこは倉庫。しかし武器だけではなく炉や金床が置かれており、何かしら知性が高い魔物がいるようだ。

「侵入者?」
「まずは様子見」
「殺しちゃえばいいよ!」

 声のほうを向くと三者三様というか三顔三様、顔が全て女性のオーガ亜種が部屋の奥にある椅子に腰掛けていた。オーガ亜種の腰布だけと異なり、きっちりと服らしきものを着用し理性が見て取れる。まともにやって勝つには相当リスクを負わなければ無理だ。

オーガ亜種のユニーク種******
亜種と同じだが顔の性別が男のみもしくは女のみであり、知性が人並みに高い。ダンジョン内の一室を設けて何かを作っていたりするが、個体差が非常に激しい。
酒や食べ物と引き換えに見逃したり手を貸したりしてくれる。
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 刺激しないよう剣を取り出さず、酒樽を倉庫から出しその場に置くと三顔が一様に見る。今にでも酒樽に手を出しそうな表情だ。

「酒と交換で剣を打ち直して貰えませんか」

 炉があり金床がある部屋。それならと思ったのだが、酒樽をじっと見た後警戒を少し解いてくれたのか椅子から立ち上がると酒樽を掴む。

「まずは酒だね?」
「話は酒が先」
「もっと酒をよこせ」

 ラクシャ達用にと買っておいた大樽を合計3個ほど空け、一応に満足したのかその場に座ると左の3腕をこちらに開いて向けた。

「それで?」
「どれを打ち直して欲しい」
「とっとと出せ」

 バッテリングラムを両手でもったまま差し出すと第一右腕で持ち上げ、第二右腕とあわせて軽々と振り回してみせる。そして残った6本の手で叩いたり撫でたあと、金床の上に置いて考えるように首をかしげていた。

「ただの鉄作りにしては丈夫?」
「人にしては良い出来。でも人には大き過ぎる」
「屑鉄」

 金床の上に置いてハンマーで軽く叩き、何かを確かめているようだ。しかしその表情はあまり良くない。オーガの視点から見て色々足りていないのだろうか。

「一からやり直し?」
「魔鉄を混ぜて打ち直し」
「設計思想から直す」

 こちらを振り向かず炉に火を入れると作業を始めた。その表情は真剣そのものでこちらが何か言う隙はない。

「二日掛かる?」
「明後日追加の報酬を持ってきて」
「酒だ酒」

 それからこちらに意識を向けることはなく、そのまま炉を調整したり道具を用意したりと忙しくしており、邪魔しては悪いと静かに部屋を後にしたあとレッサードラゴンとオーガを狙い続けた。