二手に分かれてダンジョンに潜るようになって数日。ラクシャとリヒトが居ない時エルとリーアナに言われるがままに料理しているが、プリン・パンケーキもどき・アイスクリーム・クレープもどきと、どれも指示されながら調理すれば思い出す最初の世界のものばかり。この世界では未知の料理ばかりで世界の調理学の成長に対して害を与えかねない。似た材料が一般流通しているだけに、外部に知られた場合本当に危険だ。

「リーアナ」

「何か御用でしょうか」

 素手でかぶりついているエルと違い、丁寧にパンケーキをナイフで切って食べているリーアナは口元をナプキンで拭う。

「出来れば魂の記憶を勝手に探るのは止めてもらえませんか?」

 私が努力して思い出さなくても記憶を探って必要な情報を取り出せるのは助かるのだが、料理のためだけに探られるのはなんとなく不条理な気がしてならない。エルは言っても聞かないが、止め役でもあるリーアナが言えばわかってくれるはず。

「記憶を読む練習の一環ですので、得るものがあったほうが私達にも良いのです。特にエルはすぐ面倒だと投げてしまうのですが、料理などは真剣に探ってくれるのです」

「しかし世界にとって知識が洩れた場合」

「私達が外部に漏らす事はありません。状況を見てラクシャ達が居ない時頼めるもの、居ても問題がないものを選別しています」

 こちらの意図する事の先を理解ししっかり説明し、何よりも人間と世界のことをしっかり見据えてもいる。やはり二人はテラス様の従属神か何かではないのだろうか。

「問題はありません。それにこの情報が役に立つときもきっときます」

 強い確信を持って話すリーアナの表情が記憶の誰かと重なってみえる。とても大事な者だった気がするのだが思い出せない。ただ、世界と私の敵でもなく信頼できる事だけははっきりした。

「わかったよ。何も問題がないならそうしてくれ。ただ見られたくない事もあるのは知っていて欲しい」

「最初の世界で幼い頃お漏らしした事ですか? それとも前世で大丈夫だと言いながら足を滑らせて橋から川に落ちた事ですか?」

「それを止めてくれと言ってるんだ!」

 頭を抱えたくなる。もうしっかりと忘れてしまっていた過去を発掘され覚えられているようだ。その後本当に止めてくれと真剣に頼むと色々納得してくれたが、今後も料理に関しては言われた通りにすると条件を着けられてしまった。
 その頃、ジノは焼いたり煮たりと肉の調理に拘り、器用に調味料で味付けをした肉を魔法で浮かせ食べていた。