オーディン王国 エウローリア公爵家 守護騎士団会議室

 公爵家を守る十騎士団と白鳳騎士団の団長と副長が集まり定例会議を行っていた。議題はここ数年、貴族の伝手によって入団してくる見習い騎士達が問題を起こす事が多くなり、責任者である各騎士団長達の頭痛の種となっている事だ。単純な戦闘能力と礼節に関しては合格ラインを超えてはいるのだが、訓練参加率の低下や文官や下働きの者達への粗暴な行為など少々目に余り始めている。

「これ以上悪化するようであるならば処刑を含め考えねばならん」

「しかし貴族の親達が許すと」

「セグレンス公爵の動きも怪しい今、戦力を減らすのは得策ではない」

 平時であるならば質を取る事が出来るが、現在次期王位を選定次期であるため、王位継承権を持つもう一つの公爵家と直接的争いになりかけている。オーディン王国では王位継承権を持つ子は二つの公爵家によって別々に育てられ、もっとも優れた子が王位を引き継ぐ。
 そのため王位継承が近付くと公爵家同士で争いが起きる事があるのだが、当代は二人の継承者の力が拮抗して居る事もあり険悪な関係にあった。そんな状態で騎士と言う大事な戦力を削るのは避けるべき行為。

「何よりも貴族意識が強過ぎる。騎士としての心構え以前の問題だ」

 貴族の家を継ぐのは何かしらの事情が無い限り長男が当主となり、それ以外の子は貴族であり続けようとするならば何か功績を挙げるか他の家に婿入り嫁入りするしかない。騎士見習いとして王族である公爵家に仕える事が貴族で居られる可能性が最も高いということだ。

「問題がある者達の再試験を行う。方法はアークス副長に一任したいのだが」

「異議は無い」

 深い皺の刻まれた白髪の騎士は現状に深くため息をついた。

「我々の古い考えよりも良かろう。話を聞かん以上強硬手段も必要な事。最悪の事態も容認する」

 型どおりの教育では問題を解決する事はできなかった事を嘆きたくもあり、安心してこの問題を任せられる次世代の団長候補が現れた事を喜ぶべきかそのような思いに老騎士は至る。

「それでは見習い騎士たちの再試験を行い、試験結果によっては貴族騎士見習いから一般の騎士習いに降格させます。そして比較対象及び評価試験相手として冒険者の召還を提案致します」