「ようこそ、ユメ紡ぎへ」

そう僕の手を文字通り逃すまいと握りこんでいるのは金髪の女性。
彼女は、ただの人間では無い。
その本当の姿は、小さな狐…である。

「私達は”妖狐”いわゆる狐の妖みたいなものよ。このカフェに居るのは全員が狐よ。なんじゃ驚いて声も出ないか？人間さんよ」

軽々と話す内容とは思えないようなファンタジックな内容に確かに僕の頭は追いつけない。頭の中で処理しきれないんだ。
しかし、目の前の金髪の女性。クロさんが純粋に人では無いことは理解できた。

(ま、狐から人になった瞬間を見たら納得せざるを得ないしな…はぁ。夢であって欲しかった…)

その事実と同時に僕には一つの疑問が浮上した。
狐であるクロさんと目の前のクロさんの違いである。
確かに僕は狐のクロさんを始め犬かと思ったが、それは形を見間違えただけでは無い。

”狐は黄色いイメージが強かったからである。”

しかし、目の前に居たのは”黒い狐”だった。
なのに何故金色？クロさんが黒い狐なら黒色では無いのか？
ーーでもそれより気になるのが…

「ま、色々とこんがらがって居るようじゃからな。とりあえずアンタに決めたんだから仕方ないか、アンタしか居ないしなー」

「…クロさん。聞きたい事はいっぱいあるんですが…」

「ん？なんだ？聞いてみろ、答えれる範囲で聞いてやる」

「僕に”決めた”って何ですか？それから僕のことを何処まで知って居るんですか？」

ふむ…と考えるクロさんを前にしながら自分が倒れる前の事を振り返った。

『退屈しない日々』
それは確かに僕の願ったものである。しかし、はたから見て大人しく冷静であるというイメージの僕の思いは誰にも言っていなかったはずだった。なのにどうして？

するとクロさんは、居住まいを正しカフェのあるらしいフロアに僕を連れて行ったのだ。
そして、フロアには先ほど居たコウさんの他に2人の男女が居た。

そして、この日きっと僕の人生は思った以上に”退屈しない”目まぐるし人生へと変えられたのだ。