最近、エリーは思い続けていることがある。
それは、この家にやってきてからまだ一度もウィリアムの本を読んだことがないということだ。

書斎に勝手に入るわけにもいかないし、やっぱり本人の直接頼むしかないだろうか。
しかしウィリアムが素直に本を読ませてくれるはずがない。

「あの、ウィリアムさん」

「……なんだ」

夕飯を一緒に食べている時、エリーは意を決してウィリアムに頼んでみることにした。

「私、ウィリアムさんの書かれた本を読んでみたいです」

エリーの一言にウィリアムは黙り込んだ。
食事をする手も止まってしまっている。

エリーは期待を込めた目でウィリアムを見つめている。

「……必要ない」

そう言って食事を続けるウィリアム。
エリーは予想通りの展開に苦笑して、同じように食事を続ける。

時々「本当にダメですか?」「ちょっとだけでも……」と頼んでみるが、ウィリアムが首を縦に振ることはなかった。