「ごめん、エリー。オレ帰んなきゃ」

「そうみたいですね」

「明日には帰っちまうんだよな。また今度案内するから、ごめん」

「いえそんな、今日は十分楽しかったです」

「そうか?」

「できた嬢ちゃんだなぁ」

鬼がまた豪快に笑う。
シェルは今気付いたように鬼に視線を戻す。

「こいつ、エリー。ウィルと一緒に暮らしてるんだってさ」

「ほう。そうなのか」

「で、こっちはサラの父親」

「えぇっ」

予想外の言葉にエリーは思わず声を上げる。
改めて赤鬼の姿を見る。そんな、馬鹿な。

「サラは鬼と人間のハーフなんだよ」

「うん」

いつの間にやってきたのか、鬼の後ろから出てきたサラが頷く。
鬼の身長は、サラの二倍はあるように見える。

「はっはっは、面白い嬢ちゃんだ」

鬼が豪快に笑っている間、サラはガラスの破片を片付け始める。

「じゃあ、オレたちそろそろ帰るな」

「シェル坊はともかく、嬢ちゃんは中でお茶でも飲んでいきな。サラも休憩にすればいい」

「あ、いえ、私も宿に戻ろうかと……」

「そうか」

「はい」

鬼が残念そうに眉を下げる。サラは相変わらずの無表情でエリーを見つめる。

「また来て」

「はい! もちろんです!」