「シェル坊!」

「うおっ」

シェルが驚いたようにびくっとする。
エリーもその大きな声に驚き、声のした方を見た。

そこには、真っ赤な肌をした大きな鬼がいた。
その緋色の瞳にはどこか見覚えがあるような気がして、エリーはほのかに首を傾げる。
リヒトは怯えたようにエリーの後ろに隠れた。

「おじさん、シェル坊って呼ぶのやめてくれよ」

シェルが不服そうに唇を尖らせる。
鬼は豪快に笑い、ガラスでできた壁に手を添えた。

その瞬間、ぱりんと音を立てて壁が壊される。

「あっ」

「あぁーっ!」

しまったというような顔をする鬼に、それを咎めるような顔をするシェル。

「おじさんいい加減にしてよ! 直すのオレなんだからさ!」

「すまんすまん。いやぁ、割れやすいなガラスってのは」

「おじさんが力入れ過ぎなんだよ」

「そんなことよりシェル坊」

「そんなことって!」

怒るシェルに大きな鬼は反省してなさそうに言葉を続ける。

「お前の親父が怒ってたぞ。片付けサボりやがってって」

「げっ」

シェルが心底嫌そうな顔をする。
鬼は手に刺さったガラスの破片を抜きながらまた豪快に笑う。

「そろそろ帰った方がいいんじゃないか?」

「うっ……そうするよ」

はぁ、と深くため息をつく。そしてエリーを振り返った。