広場に着くと、そこには大量の人間。……と、鬼。
「やっぱり混んでるわねぇ」
アンナが少し声を張って言う。
エリーは皆とはぐれないように、人の波に流されないように一生懸命足に力を入れる。
そんなエリーの手を、ウィリアムがそっと握った。
「……?」
思わずウィリアムの顔をじっと見る。
しかしウィリアムは一切エリーを見ておらず、暗くなった空を見つめている。
それにつられ、エリーも空を見上げた。
すると、大きな音を立てて、空に大きな花が咲いた。
「あっ」
何も知らされていなかったエリーの驚いた声が、広場に響く歓声の中に消えた。
手を伸ばせば届きそうなその大きな花は、咲いてはすぐに消えてしまう。
残されるのはわずかな火薬の匂いだけ。
しかしすぐにまた新たな花火が空に浮かぶ。
広場にいる全員が、空を見上げ嬉しそうに笑っていた。
……これが、火炎の陣なんだ。
胸がいっぱいになったエリーは、ぎゅっとウィリアムの手を握った。