太鼓を叩く低い音が鳴り響く。
そんな音と窓から入る日の光で、エリーは目を覚ました。

起き上がって部屋を見回してみるも、同じ部屋に泊まっているはずのアンナの姿はない。
枕元にはリヒトがすやすやと気持ちよさそうに眠っている。

ゆっくりベッドから降り、窓を開ける。
それと同時に、たくさんの大きな音が部屋の中に入ってきた。

「わっ」

一瞬びっくりして窓を閉めかけるが、思い直して窓の外に身を乗り出す。

「すごい……!」

街並みが昨日よりもずっときらきらしている。

楽しそうに笑い合うたくさんの人の姿。
音楽に合わせて踊る人の姿。
見たこともないような食べ物を口に含む人の姿。
昨日初めて見た鬼の姿も見られる。

エリーは胸の高鳴りを感じていた。

「あ、エリー。おはよう」

扉の音に気付かず、エリーは背後からの声に驚き振り向いた。

「アンナさん」

「おはよう」

「おはようございます」

興奮して頬を赤らめるエリーの姿を見てアンナが笑う。

「既に楽しそうね?」

「はい!」

そう答えると、アンナは窓を閉めた。

「ここから見てないで、さっさと街へ行くわよ」

「はい」

「あ、でもその前に」

アンナがそう言ってにっこりと微笑む。
エリーはきょとんとその微笑みを見かえす。

「着替え持ってきたから、着替えましょう」

楽しそうに笑うアンナに、エリーは大きく頷いた。