「大丈夫か」
またしても人に押されてよろけるエリーを支えたのは、ウィリアムだ。
「ウィリ、アム……さん……」
「ぼーっとするな」
エリーを覗きこむ。エリーはぼーっとその無表情を見つめ返した。
「……行くぞ」
ウィリアムはそう言ってエリーの手を取り、歩き出した。
息苦しさはもう感じていない。
リヒトが心配そうにぐるぐるとエリーの前を回っている。
エリーはそんなリヒトに微笑みかけて、ウィリアムの横顔を見た。
いつもと変わらない無愛想な表情。
エリーは安心して、前を向いた。
「ねぇエリー、聞いて。こいつサラを私たちに取られて拗ねてたのよ」
「拗ねてねぇって!」
「嘘よ。ねぇ、サラ」
「……?」
「そこでサラに振るなっつの!」
「シェルは相変わらず不憫だね」
「う、うるせぇよ」
アンナとダニエル、シェルとサラが盛り上がっているようだ。
エリーは思わず笑ってしまう。
「エリーまで笑うなよ」
「ふふ、ごめんなさい」
シェルが拗ねたように唇を尖らせ、顔は少し赤らんでいる。
そんなシェルを見て、エリーはまた笑った。