エリーは列車に乗っていた。
これから火炎の都、フランメへ向かうのだ。
「ダニー、あれはタヌキよ」
「アライグマだよ、アン」
「……どっちでもいい」
幼なじみ三人組が楽しそうに話をしている。
それをエリーは微笑みながら見ていた。リヒトは窓枠に座っている。
風の都、ヴィルベルから出ただけで気温が上がったような感じがする。
ヴィルベルが比較的涼しいというのを実感した。
しかしそんな暑さも心地よく感じるくらい、エリーはフランメに行くのを楽しみにしていた。
「エリー、お菓子食べる?」
唐突にアンナが鞄からお菓子の詰め合わせを出し、開けた箱をエリーに差し出す。
リヒトの目が輝く。しかし今は食べさせることはできない。彼には諦めてもらうしか道はない。
「あ、ありがとうございます。いただきます」
控えめに口にするエリーを見てアンナが優しく微笑む。
本当に姉のような人だ。
リヒトは物欲しそうにエリーを見て、悲しそうな表情でゆっくりと再び窓の外に視線を移した。