「さっきもちょっと言ったと思うけど、あなたは海辺に倒れていたの。そこであなたを拾ったのが、このウィリアムっていうツリ目で柄の悪い男なのよ。なんか怖がらせちゃったみたいで、ごめんね」

「い、いえ、そんな……」

咄嗟にそう答えて、ウィリアムと言われた男を見る。

最初に目が合って以来、全くこちらを見ていない。
やはり怖がったような態度がよくなかったのだ。

思わずぎゅっとカップを握る。

「あんた何か言うことないの?」

アンナが呆れたようにウィリアムに言う。
彼はアンナを一瞥して、珈琲の入ったカップを撫でる。

「……柄は悪くない」

「そこじゃないわよ」

「あ、あの」

鼓動が早い。
かなり落ち着いたつもりでいたが、まだ緊張しているようだ。

集まる二人の視線に、瞳を揺らす。
すぅっと息を吸い込んだ。

「そ、その……助けていただいて、ありがとうございます」

ぺこっと頭を下げる。

しかし何の反応もない。

不安そうに顔を上げると、二人は驚いたように少女を見ていた。

「ふふ、いいのよ。倒れてる女の子を放っておくなんてできないもんね、ウィル」

「……あぁ」

そしてアンナはかすかに微笑んだままカップを置いた。