「おっけー。エリーな。よろしく!」
ニッと笑う茜色の髪の青年。
口元から覗く八重歯がより一層動物感を出している。
「オレはシェル」
「シェルさん…ですか」
「あぁ。でもさん付けは気持ち悪いからやめてくれ」
「は、はい」
そう返事をするとシェルは満足気に頷いた。
その仕草にエリーはリヒトのことを思い出し、泉に視線を移した。
妖精の姿は見当たらない。
本能で逃げてしまったのだろうか。
「エリーは何見てたんだ?」
「……泉を見てました」
妖精を見てました、と言うわけにもいかず、エリーはそう答えた。
シェルは「ふーん」と興味なさそうな返事をした。
「ここ綺麗だもんなぁ」
「よく来るんですか?」
「こっち来た時はちょっと寄るよ。オレだけの穴場だと思ってたんだけど」
違ったみたいだな、と笑い、シェルはエリーの目を見つめた。
吸い込まれそうな瞳にエリーはドキッとしてしまう。
「よくここに来るんでしたら、また会えるかも知れませんね」
そう言って微笑むエリー。
シェルもにっこり笑って「そうだな」と頷く。
「ここ妖精がいるらしいんだけどさ、オレ会ったことねぇんだよ」
「そ、そうなんですか」
ついさっきまで水浴びしてました、なんて言えず、エリーは苦笑する。
シェルは悔しそうに顔を歪めている。