最近エリーはよく泉に行っている。
もちろんリヒトも一緒だ。
何度も泉へ行っているうちに道も覚えたし、妖精たちが毎日泉で水浴びをしているわけではないこともわかった。
多くの妖精で溢れている時もあれば、リヒトが水浴びを始めてやっと何人かやってくる時もあった。
今日も小さい妖精たちだけで水浴びをしているようだ。
小さい光が飛び回っている姿を見ているだけで、神秘的な空間に迷い込んだような気分になる。
そうしていつものようにぼーっと泉を見つめていると、突然視界が真っ暗になった。
「え、え、なんですか?」
エリーがあたふたしていると、後ろから「くくっ…」と笑い声が聞こえた。
誰かいるのだとわかると、エリーの視界は解放された。
「よっ」
声の主はそのままエリーの隣に腰掛けた。
手で目隠しをされていたのだ、とエリーはそこで初めて気が付いた。
「こ、こんにちは……」
そこにいたのは、茜色の髪をした猫のような目の青年だった。
困惑するエリーを見て楽しそうに口元に笑みを浮かべている。一体誰なのだろう。
「見ねぇ顔だな。お前、誰?」
自分の膝で頬杖をつき、エリーの顔を覗き込むようにして首を傾げる。
なんだか身のこなしも猫のようだ。
「え、えっと、エリーです」
「エーエットエリー?」
「エリーです!」
声を張り上げるエリーを見て青年はまたしても「くくっ」と意地悪そうに笑う。
なんだかとても楽しそうだ。