「エリーちゃん」
名を呼ばれて顔を上げると、正面にダニエルが立っていた。
しかし、ダニエルの足元には何もない。
空を飛んでいるのだ。
微笑みと共に手を差し出され、エリーはダニエルの手に自分の手を添えた。
そしてゆっくりと歩き出す。
少し怖い気持ちもあったが、安心感の方が大きい。
ダニエルの手があるからだろうか。
それとも、リヒトと似た羽根があるからだろうか。
「……ダニエルさん」
「ん?」
「私、空を飛んでます」
「はは、そうだね」
ダニエルの手を掴みながら、エリーは空中を歩いていた。
気持ちの良い風に包まれながらヴィルベルの街の匂いを感じる。
「ここは素敵な街ですね」
空の散歩を楽しみながら、エリーがぼーっとしたような感覚で小さく呟く。
聞こえているのか聞こえていないのか、ダニエルはそんなエリーを見て優しく微笑んだ。