「次はどうしようかな……あ、空でも飛んでみる?」

「はい?」

訳のわからないことを言われきょとんとした。

空を飛ぶでなんとなくリヒトを思い出す。今頃は家で退屈しているだろう。
しかし出かける時間になっても起きない方が悪い。
家に帰ったらきっと拗ねているだろうから、今度こそクッキーを作ってあげよう。

「風の都の名物の一つだよ。きっと気に入ると思う」

ダニエルが柔らかく微笑む。
身体から癒しのオーラが出ているかのような錯覚に陥る。

それにしても、空を飛ぶというのはどういうことなのだろう。

「ここだよ。ちょっと待っててね」

そう言ってダニエルが入っていったのは薄暗いお店だった。
看板もなく、何か売られているような商品の姿もない。

しかし待っているように言われたため、奥に入っていくダニエルを見送り、入口で店内の様子を伺う。



「お待たせ」

そう言って出てきたダニエルの手には、地味な紙袋があった。
何を購入したのだろうか。

しかしエリーが何か言う前にダニエルは行こうか、と歩き出す。

「あの、ダニエルさん」

「なに?」

「何を買ったんですか?」

「ふふ、秘密」

「……秘密ですか」

エリーが困ったようにダニエルを見上げる。
ダニエルは楽しそうににこにこしていた。