「本当はもう一人幼なじみがいるんだけどね、その子は今フランメにいるんだ」
「フランメ?」
「うん。火炎の都とも呼ばれてるね」
その言葉にエリーは首を傾げる。
聞き覚えがあるような気もするが、今のエリーに記憶というものは期待できない。
「あぁ、そっか」
事情を知っているのか、ダニエルは眉を下げて微笑んだ。
そしてぽんっとエリーの頭に手を乗せる。
「まずはこの街のことから紹介していこうかな」
記憶のことに触れず、ダニエルはにこにこと笑顔を絶やさずに歩いている。
エリーもその笑顔に癒されながら共に歩いていく。
「ここは風の都、ヴィルベル。文字通り風がよく吹く街だよ。比較的他の都より快適な気候なんだ」
「そうなんですね」
それを聞いて、エリーはそっと目を閉じてみた。
確かに爽やかな風がワンピースの間を通っている感覚がする。
気持ちいい。
隣でダニエルがくすっと笑う気配がした。
「さっき話した幼なじみの一人がいるのが、火炎の都、フランメ。鍛冶や工芸品が有名かなぁ。特にガラス工芸は絶対に一度は見てみるべきだね」
そう言ってダニエルはきょろきょろと周りを見渡す。
急にどうしたのだろうか。
「確かこの辺に雑貨屋さんがあったはずなんだけど……あっ」
見つけたのか、嬉しそうにエリーを振り返る。
そしてその雑貨屋に歩み寄っていく。
「フランメと比べたら少ないけど、この辺りのガラス製品とかはフランメのものだよ」
「……綺麗ですね」
思わず息を呑む。
雑貨屋に置いてあるのは主に食器類とアクセサリーのようだ。
角度によって変わる色が、光を受けて輝いている。
見入るエリーを見て、ダニエルがそっと微笑んだ。