エリーは街を歩いていた。
風の都、ヴィルベル。
爽やかな風に吹かれながら、のんびりと歩いていく。
初めは不安だらけだったが、もう随分と見慣れた街となっていた。
リヒトのためによく行っていたお菓子屋さん。
優しいおじいさんのいるおもちゃ屋さん。
よく気にかけてくれていた時計屋さんのおじさん。
フランメのガラス製品のある雑貨屋さん。
広場に堂々と佇む噴水。
いつも賑やかな駅前。
風の気持ちいい風車の建つ草原。
いつも見ている景色を、ひとつひとつ、確認していくように見ていく。
「あれ、エリー」
聞き覚えのある声。前を向くと、テオがいた。
「テオさん」
「久しぶりだな」
「そうですね」
嬉しそうな表情のテオ。
エリーはにっこり笑って答える。
「なぁ、もし時間があったら店来いよ」
「ふふ、そうします」
「おれ今買い出し中だから、すぐには戻れないんだけどさ」
テオの言葉に、エリーは笑って頷く。
そして、テオの言葉通り、リザの店へ行くことにした。