エリーは海を見ていた。
気分転換をするウィリアムを追いかけてきたわけではない。
今日は一人だ。
エリーは、自身の記憶と向き合おうとしていた。
海で倒れていたエリー。
船に乗ると意識を失い、大切そうに握っていたと言われる指輪には懐かしさを感じる。
ふと頭の中に浮かんだ美術館。
頭を撫でる優しい手。
レイラ様と呼ぶティーナの声。
その全てを思い浮かべてみるも、記憶は戻らない。
ティーナに直接聞くしかないのだろうか。
そんなことを思いながら、エリーは海を見つめる。
すると、エリーの前に見慣れた尾ひれが現れる。
ビアンカだ。
「ハイ、エリー」
海から顔を出し、美しく微笑むビアンカ。
「こんにちは、ビアンカさん」
ビアンカ悪戯っぽく微笑み、エリーを見上げる。