エリーは家事を再開することにした。
いつまでも部屋に閉じこもっていても、ウィリアムに迷惑が掛かるだけだ。

自分にできることはやる。
エリーはそう決めていたはずだ、と自身に言い聞かせる。

きっと戻ってくるというサラの言葉を、エリーは信じることにした。

しばらくしたら、もう一度泉へ行こう。
そして、リヒトを迎えに行こう。

そう決めることで、エリーは落ち込まないようにしていた。
まずは、自分の記憶のことだ。

そう考え、エリーの胸の奥がずしりと重くなる。
思わず大きくため息をついてしまう。


呼び鈴が鳴った。
エリーは顔を上げ、そして玄関へ向かう。

ウィリアムへの来客だろうか。しかし今日ウィリアムは朝から出かけていた。
新作の打ち合わせだとエリーは聞いている。

そんなことを思いながら、扉を開けた。