その日もエリーはどこかぼーっとしていた。
自分が誰なのかは知りたいと思うが、知るのが恐い。

何が恐いのかという明確な理由はないが、ティーナの話を聞いて自分のことを知った時、全てが変わってしまう気がするのだ。

幸い、ウィリアムはいつでもいいと言ってくれている。
エリーはその言葉に甘え、淡々と家事をこなしながら考えをまとめることにした。


家事を一通りこなし、エリーはふとリヒトがいないことに気が付いた。
いつもこれでもかというくらいエリーと共にいるリヒト。
何故かその姿をまだ見ていなかった。

まだ眠っているだろうか。
エリーは部屋に戻り、リヒトを探すことにした。

部屋に戻り、エリーはまずベッドの上を見る。
いつもなら、枕元で寝ころんでいるはずだ。しかしそこにリヒトの姿はなかった。

なんとなく嫌な感じだ。
エリーは心配になり、部屋の隅から隅まで探すことにした。

リヒトは小さいため、ちょっとした隙間でも入り込むことができる。
そんな場所に入る理由はわからないが、エリーはとりあえずリヒトの捜索をする。

部屋の中にはいなかった。
エリーはどこか緊張したような、強張った顔で部屋を出る。

部屋にいないのなら、他の場所を探すほかない。
キッチンやリビング、そしてダイニング。

さすがにウィリアムの書斎には入ることができないが、エリーは必死で家の中を探した。



リヒトはいなかった。