「レイラ様っ!」

叫ぶように声を上げて、知らない女性は勢いよくエリーに近寄り、抱きしめた。
皆が驚いたように、そして困惑したようにそれを見ている。

声を出すこともできず、放心状態になってしまっているエリー。
女性の温もりに、何故か涙が出そうになる。

誰も声を出さず、時だけが過ぎていく。

ウィリアムがそっとエリーと女性の間に入り、二人を離した。

「……すみませんが、あなたは」

「……あ、し、失礼しました。私、帝都でレイラ・ロードナイト様の家の使用人をしております。ティーナといいます。ロードナイト家の家事や世話はもちろん、家の管理なども担当させていただいております」

そう言ってお辞儀をする。
顔を上げたティーナの目には今にも零れそうに涙が溜まっている。

皆が余計に困惑したように顔を見合わせる。
そんな反応に、ティーナもまた困惑したように視線を巡らせた。


「……私たち、宿なので先に帰らせていただきますね。本日はありがとうございました」

シャールが微笑んで言うと、カイもそれに合わせて頷いた。
リートも共に立ち去っていく。気を遣ってくれたのだろう。

「お、オレらもちょっと時間潰してこよっか、な」

シェルがたどたどしくそう言い、サラも頷く。

二人が立ち去り、残されたのはアンナとダニエル。
ウィリアムとエリー。そしてティーナだけとなった。