「……もう少し、待ってくれないか」

「何をですか?」

「アンナのことだ」

「アンナさんのこと……?」

「今お前と顔を合わせたら……お互いを傷つけることになるかも知れない」

「そう、なんですか?」

「……命日なんだ。もうすぐ」

ウィリアムがエリーと視線を合わせずに言う。
エリーは切なそうな表情でウィリアムを見ている。

「……エリカさん、ですか?」

「ああ」

返事をして、ウィリアムはため息をつく。

「この時期、アンナは人と距離を取るんだ。もう少し、待ってやってくれ」

「……はい」

エリーはそう言って、持っていたアイスクリームを口に運ぶ。
その反対側を、リヒトが遠慮なく舐め続けている。