妖精の少年はエリーの部屋で寛いでいた。
どうやらウィリアムには少年の姿が見えないらしく、エリーについてきていても何も言われなかった。
たまに姿が見えないこともあるが、基本的にずっとエリーの部屋に住みついている。
そしてそれをエリーは普通に受け入れていた。
「そういえば、妖精くんのお名前は?」
少年からしたらそれはすごく今更な質問だ。
呆れたようにため息をついて見せた後、首を大きく横に振った。
「名前がないってこと?」
それに対し大きく首を縦に振る。
どうやら正解のようだ。
似たような境遇にエリーは少年に親近感を覚えた。
しかし名前がないといつまでも妖精くんと呼ぶことになる。
それはなんだか寂しいと思った。
「じゃあ、何か呼び名を考えてみてもいい?」
そのエリーの問いに少年は嬉しそうに目を輝かせた。
しばらく考え込んで、エリーは嬉しそうに顔を上げた。
「じゃあ、リヒトっていうのはどう?」
光り輝く少年にぴったりだと、エリーはそう提案した。
少年は嬉しそうに笑って頷く。
二人で笑い合う。
なんだか絆が深まった気がした。
「それでは改めまして、よろしくね。リヒト」
リヒトはエリーの周りをぐるぐると回る。
喜びを表現しているのだろうか。