涼しい風を頬に感じ、重たい瞼を上げる。

ぼやけた視界で見つめた先にあったのは白い縁の窓。
薄い水色のカーテンがほのかになびいていた。

ゆったりと起き上がり、蜂蜜色の瞳で周りを見渡す。
意識がだんだんはっきりしてくる。

しかしそんな意識とは裏腹に、現状は全く把握できていなかった。

ここは一体どこなのだろう。
大きな本棚に、シンプルな机。そして今寝ていたであろうベッド。

――見覚えのない部屋だ。


「あら、起きたのね」

突然聞こえた声にびくっとしてしまう。
扉はよく見える位置にあるというのに、扉の開く音に気が付けなかったようだ。

部屋に入って来たのは群青色の髪と瞳が綺麗な女性だった。
短く切られたその髪はその女性の明るさを象徴しているようで、実際に明るい笑顔をしていた。

この部屋の主だろうか。

「気分はどう?」

「あ……えと、悪くないです……」

久々に声を出した気がする。
そのせいか少し掠れてしまった。
なんだか気恥ずかしくなり、俯く。

髪がかすかに顔にかかり、ふわりと潮の香りがした。
無意識にその亜麻色の髪に触れる。

感じる違和感に、本当に自分の髪なのかと疑問を抱いた。