玄関の扉を開け、家の中へ入る。
リヒトはすっかり眠り込んでしまったため、頭の上ではなくワンピースのポケットに投入した。

音に反応したのか、奥からウィリアムが出てくる。
そして少し驚いたような顔をする。

エリーの脱出に気が付いていなかったようだ。

「……どこへ行っていたんだ」

「泉に、少しだけ」

「どうした」

困ったような問いに、エリーは曖昧に笑う。

「あの、少しお話しませんか?」



テーブルを挟んで向かい合って座る。
手元にはカフェオレを用意したが、どちらも手をつけようとしない。

「……今日はどうしたんだ」

エリーの様子がおかしいことにはなんとなく気付いていたのだろう。
ウィリアムは困ったように再びそう質問した。


「散歩してきたんです、今日。そうしたら、人魚のビアンカさんに出会って」

「……ああ」

「水晶玉をいただきました。泡沫祭の招待状だそうです」

「……そうか」

「はい」

「……また、皆で行こう」

ウィリアムの言葉に、エリーは嬉しそうに頷く。