「そう……ですね」
そう言って小さく微笑む。
「あの、シェル」
「なんだよ」
「……私、実は、ウィリアムさんにまだ一度も名前呼んでもらったことないんです」
「はぁ? そんなのオレだってねぇよ」
「え?」
「あいつそもそもそんな喋る方じゃねぇし、人の名前呼ぶこと自体がレアだろ。確率高いのはアンナとダニエルくらいじゃねぇか?」
そう言ってシェルは楽しそうに笑った。
「そんなことで不安に思ってんなら、呼んでもらえばいいだろ」
「そう、ですね」
そう言ってエリーも楽しそうに笑った。
「私、ちゃんとウィリアムさんとお話してみます」
「おー、そうしろ」
そう言ってシェルは立ち上がる。
そしてエリーに向かって、手を伸ばした。
「送ってってやる。こんな時間だしな」
「いいんですか?」
「おー」
二人で泉を出て、静かな街を歩いていく。
「そういえば、どうしてこちらに?」
「親父のお使い。時間の概念とかねぇんだよ、親父」
「……大変ですね」
「まぁな」
街灯に照らされる道を、二人は楽しそうに話しながら進んでいった。