「あたしはビアンカ。よろしくね」
「はい。よろしくお願いします!」
ビアンカと視線を合わせるようにして海辺に座り、エリーは元気よく答える。
「今日はね、別にあんたが人魚かどうか知りたくて来たわけじゃないの」
「は、はい」
そう言ってビアンカは、海の中から水晶玉を出し、それをエリーに渡した。
「はい」
「はい?」
水晶玉をじっと見ていると、中から文字が浮かんで見えた。
「フランメに協力してもらって作ったらしいわ。うちの招待状よ。もう十分寒くなってきたから、泡沫祭を開催するの」
「わぁ……もしかして、水の都のお祭り、ですか?」
「ええ、トレーネの祭りは、かなり美しいわよ」
そう言ってビアンカは口角を上げる。
「それは楽しみですね」
「あんたも気に入るわ。絶対よ」
嬉しそうに笑って、尾びれを一振り。
「じゃあそろそろ行くわ。海からの配達ってなかなか大変なのよ」
「お手伝いしましょうか?」
「気持ちは嬉しいけど、遠慮しておくわ。招待状の配達は結構好きなの」
ビアンカはそう言って、身体を動かす。
海に沈んでいき、そして再び海から顔を出した。
「じゃあね。泡沫祭で会いましょう」
「はい!」
ビアンカの笑顔を見送り、エリーはリヒトと一緒に水晶玉を眺めた。
「綺麗だね」
リヒトは一生懸命大きく頷く。リヒトも気に入ったのだろう。
「そろそろ帰ろっか」
その言葉にも大きく頷いたリヒト。
エリーはにっこり笑って、家へと帰って行った。