海辺を歩いている。
もう随分と寒くなってきて、しっかりと防寒をしないと風邪を引いてしまう。
しかし、とエリーは傍を飛び回るリヒトに目をやる。
リヒトはかなり薄着だ。
羽根と同化しているかのような不思議な色の服。
しかしそれはエリーの用意したものではない。
泉に行くと、たまに着替えて帰ってくるのだ。
本人も平気そうにしている。寒さは感じないのかも知れない。
「リヒト、寒くない?」
エリーの問いにリヒトは笑顔で答える。寒くないらしい。よかった。
「今日はアンナさんが夕食作ってくれるんだって」
その言葉に、リヒトは興味なさそうな表情をして頷く。
食べなくても平気そうなリヒトは、好んでクッキー等のお菓子を食べることはあっても、食事はしないのだ。
そんなリヒトに苦笑を返して、エリーは海辺を歩き続ける。
ただの散歩だ。
エリーは最近、よく海の傍を歩くようにしている。
何かのきっかけで、記憶が戻るかも知れない。
焦っているわけではないが、なんとなく、エリーはそうしたいと思った。