駅の前に辿り着くと、すぐ傍に初めて見る店が確かに建っていた。
白い壁に、茶色い縁の扉。
扉の横には大きなガラス窓があり、内装がよく見えるようになっている。
たくさんの植物が店の前に置かれていて、先日の森のお茶会を思い出す。
どうやら喫茶店のようだ。
まだ営業はしていないようだが、道行く人々が視線を向けたり、足を止めたりしている。
帝都のお嬢様という人が出すという店を、誰もが気にしているようだ。
「可愛いお店」
少し古めかしい雰囲気を出しながらも上品な外観。
大きなガラスから見える内装もまた、ヴィルベルの雰囲気と合っていて寛ぎやすそうな雰囲気だ。
「あら、それは嬉しいわね」
幼い声が傍から聞こえ、エリーは周りをきょろきょろと見回す。
「ここよ」
少しむっとしたような声に、ワンピースをぐっと引っ張られる。
どうやらすぐ傍にいたようだ。
淡黄の長い髪を二つに結んでいる少女。
猫を思わせる大きな目が真っ直ぐにエリーを見つめている。
「……あなたは?」
思わず尋ねると、少女は眉間に皺を寄せて不服そうに腕を組んだ。