雰囲気を壊したくないと思いつつも、エリーはウィリアムに声を掛けた。
「……あの、私、ダンスはよくわからないのですが……」
しかしウィリアムは気にした様子もなく、エリーの手を取り、支えるようにして背中に手を滑らせる。
「大丈夫だ」
根拠のない言葉に、エリーは不安げに眉を下げる。
しかしウィリアムはいつも通りの表情だ。
「……お前は、大丈夫だ」
いまだかつて聞いたことのない程に、その言葉は自信に満ちているようだった。
その言葉にエリーは力を抜き、手をそっとウィリアムの腕に置いた。
わずかに微笑み、そして二人は踊り始める。
エリーは全く踊れる気がしていなかったが、音楽に合わせてスムーズに踊ることができている。
リヒトもリラックスしたようにエリーの頭の上に居座っていた。
「……大丈夫だろう」
「ふふ、はい」
ウィリアムの言葉にエリーは微笑んだ。きっとウィリアムの動きが良いのだ。
エリーは完全にウィリアムに身を任せ、踊っていた。
今までのパートナーはきっとすごく幸せだったのだろうな、とエリーはしみじみと思う。
いつもと違う皆の雰囲気。
その雰囲気に新たな一面を見つけ、そして更に絆が深められたようだった。