「……おい」
後ろから聞き覚えのある低い声が聞こえた。
振り返ると、そこには機嫌の悪そうな顔をしたウィリアムが立っていた。
機嫌が悪そうな顔をしているのはいつものことだが。
「ウィリアムさん」
「何をしてるんだ」
「ちょっと海が見たくなって……あ、おはようございます」
「……ああ」
ウィリアムはやる気のなさそうな挨拶を返し、そのままエリーの隣に座る。
エリーは不思議そうにウィリアムを見た。
「ウィリアムさんはどうしてこちらに?」
「……海が見たくなってな」
その返答にエリーはくすっと笑った。
「おそろいですね?」
「そうだな」
そして二人の間に静寂が訪れる。
二人はぼーっと海を眺めていた。
不思議と不安に思っていた気持ちは軽くなった気がする。
一人でいるから、悩んでしまうのかも知れない。