「えぇっ」

思わず声が出た。
泉に辿り着くと、そこにはリートの姿があったのだ。

泉の傍でぼーっと立ちすくんでいる。

「また会ったな。先程は助かった。感謝する」

「い、いえ……それはいいんですが、何故またここに?」

「森を抜け出せなくなってな」

「さっき街に出たばかりですよね……?」

「私も困っているのだ」

表情を変えないリートは全く困ってなさそうだ。
エリーは苦笑して、帰り道を指した。

「よろしければ、目的地まで案内しましょうか」

「本当か。助かる」

そうしてエリーは再びリートと泉を去ることになった。
生粋の方向音痴とはこのことかとエリーは実感した。


再び街へ出向くと、エリーは改めてリートに向き直る。
リヒトはエリーの頭の上で様子を伺っている。

「どこのお店へ行きたいんですか?」

「菓子屋だ」

リートの言葉にリヒトの瞳が輝く。
それがわかったのか、エリーは苦笑した。

「ちょうどさっき行ってきたばかりなんですよ。こちらです」

リートを先程まで買い物をしていた店へと案内する。
歩幅が違うようで、エリーはリートに合わせるようにゆっくり歩いた。

「こちらのお店です」

「そうか」

そう言ってリートは「少し待っていてくれ」と言って店内へと入っていった。

中に入りたそうにエリーを見つめるリヒト。
しかしエリーは無慈悲に首を横に振った。
絶望したような顔をするリヒトを見て、エリーはくすっと笑った。