エリーはお菓子屋へと向かっていた。
当然頭の上にはリヒトを乗せている。
最近よく見る、風の都ヴィルベルでの光景だ。
「エリーちゃん、こんにちは」
「こんにちは」
街でもよく声を掛けられるようになった。
街の一員として認められたようで、なんだか嬉しい。
エリーはにやにやしながら街を歩いていく。
リヒトもまた、嬉しそうににやにやしている。
リヒトの場合、お菓子屋に行くのが嬉しいだけかも知れないが。
「エリーちゃん、いらっしゃい」
「こんにちは」
「いつもありがとうね」
「いえ、こちらこそ。いつも美味しいお菓子をありがとうございます!」
お菓子屋に着くと、いつもの女性の店員がにこやかに出迎えてくれた。
挨拶を済ませ、エリーはこじんまりとした店内をふらふら歩く。
リヒトは先程から興奮を隠せないようで、今にもよだれが出そうだ。
妖精は皆、菓子を好むのだろうか。
エリーは今度泉にも持って行ってみようと決めた。
「どれがいい?」
小声でリヒトに聞くと、リヒトはいくつかのお菓子の上でふわふわと飛び回る。
まだ悩んでいるようだ。
そして懇願するような切ない表情でエリーを見つめる。
しかしエリーは首を振った。
「全部はダメだよ」
リヒトは悲しそうな顔をして、お菓子の厳選作業に入った。
これはしばらくかかりそうだ。
エリーは店内をぐるぐる回って、リヒトの決断を待つことにした。