「この街を探検したいです」
意気揚々とウィリアムに告げる。
ここ数日ずっと考えていたことだ。雨も降っていない、絶好の探検日和だ。
今日は珍しく朝食を共にとっていた。
それだけでなんだかエリーはウィリアムと絆が深まったような気持ちになる。
ウィリアムは無言でエリーに視線を移した。
彼の返事には一呼吸待つ必要があることをこの数日で覚えていた。
返事をする前にじっと目を見る癖がある。
そのため期待の眼差しでウィリアムの返事を待つ。
「一人で大丈夫か」
わずかに首を傾げる。
声のトーンはいつだって棒読み気味だが、その仕草で疑問形であることを察する。
エリーは柔らかく笑ってみせた。
「大丈夫です」
その返事に満足したように珈琲の入ったカップを口に運びかけたが、ふと呟くように付け足した。
「……夕食」
たった一言の単語。
エリーはその言葉に一瞬ぽかんとする。
そしてすぐにハッとしたように「あっ」と声を出した。
「大丈夫です。夕食の時間までには必ず帰ります」
今日は二人で外へ夕食を食べることになっている。
忘れるはずがない。
エリーの言葉にウィリアムはかすかに頷き、立ち上がった。
この後はおそらくまた部屋にこもるのだろう。