「ウィルの好物はね……辛いものだよ」
「辛い、もの」
初耳だ。
しかしダニエルがそう言うのならそうなのだろう。
なにせ、二人は信頼し合っている幼なじみなのだ。
「その作戦でいこうと思います」
そう言ってエリーはぎゅっと拳を握る。
ダニエルも真似して笑顔で対応する。
「うん。頑張ってね」
「じゃあ、私買い物をしてから帰るのでそろそろ行きますね。お話を聞いてくれただけでなく、美味しいカフェオレもいただいて、どうもありがとうございました」
「いえいえ。また来てね」
「もちろんです!」
「……ウィルが本読ませてくれなかったら、ごめんね」
意味深な言い方をするダニエルにエリーは首を傾げる。
「読ませてくれなくてもダニエルさんのせいじゃないですよ」
「はは、そうだといいな」
そう言ってダニエルはいつも通りの笑顔でエリーを見送った。