「ただいま」
「あ、おかえりなさい」
「留守番させちゃってごめんね」
ダニエルは本当にすぐ帰ってきた。
袋も持っていることから、買い物をする用事があるというのは嘘ではなかったのだろう。
「はい、これお礼」
そう言ってエリーに渡したのはお菓子屋さんのクッキー。
リヒトの瞳が強く輝いた。
そしてダニエルはわざとらしく焦った声を出した。
「あちゃー、どうやら大切なウィルの本を泉に落としてきてしまったみたいだ」
あまりにわざとらしい言葉に、エリーは思わず笑ってしまう。
そして悪戯を思い付いたような顔で提案した。
「私が探して持ってきましょうか」
「それは助かるよ。またエリーちゃんに留守番をさせるわけにはいかないからね」
そう言ってダニエルはウィンクをする。
「じゃあ、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
全てをわかっているような笑顔でダニエルはエリーを見送った。
エリーはリヒトを連れて泉に向かって歩いていく。
泉に着くと、確かに石の傍に見知らぬ本が落ちていた。