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翌日から、阪南は学校に通うようになった。残りの登校日全てを使って周りと打ち解け、自然と彼女の周りには人だかりができた。
「本当に凄いよね、昌弘くんたち」
そう言ったのは阿須和さんだった。とても感心した様子で阪南と周りにいる人だかりを見ていた。
「まあ、そんな凄い事はしてないけどな」
「ふふっ、全然そんなことはないと思うな」
彼女は微笑ましそうな顔で、言った。俺は自然とつられて、笑みがこぼれた。
「よお、昌弘。阪南とちゃんと話せたようだな」
そう言ってきたのは、拓海だった。いつもの調子の良い様子で声を掛けてきた。
「まあな。何度も言っているんだが、特に凄い事はしてない」
「嘘いえ」
どこが、嘘なんだと突っ込もうとしたが、それを遮る様に拓海は言った。
「あんなに変わった阪南を見て、どこが凄くない方法だ。お前の行動は凄い事だろ」
やがて、阪南が学校に来る日は短くなった。阪南が最後に登校する日、俺たちのクラスでは阪南とのお別れ会をするという事になった。言い出したのは、田月だった。
皆が、色紙に別れの言葉を書く。俺は、最後に書く事になった。その時に書いたことはこうだ。
『いつかきっとまた会えるから』
そして、お別れ会当日になった。皆が阪南の周りに集まって最後の別れを惜しんだ。この短期間で良くここまで変わったのだと、なんとなく実感する。
その後、俺は御崎さんたちと共に阪南と駅で別れ際の挨拶をしにやってきた。
「ありがとう。向こうでもちゃんと頑張るからね」
「ああ……俺たち、きっといつか会えるよな?」
「……絶対に会えると思うよ」
それが、俺と阪南のこの日、最後のやりとりだった。すると、もうすぐ電車が発車するアナウンスがなる。それを聞いた阪南は荷物を持って電車の中に行く。電車の中には阪南の母も居た。
「それじゃあ、皆またね!」
阪南は電車のドアが閉まる直前、そう確かに言った。
俺たちは、せいいっぱい阪南が乗る電車に対して手を振った。電車が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。
「……ねえ、昌弘。私たち、ずっと友人としてやっていけると思う」
神無月が不安そうに聞いてきた。いつもの雰囲気とは大違いな弱音を吐きだした。
「……確証はないけど、きっとこれからも友人だと思う」
俺の中には、なんとなく確信があった。
きっと、俺たちは彼女を中心に繋がっていてそれが、途切れる事はないのだと信じている。たとえ、どんなことがあったとしても。
「俺たちはきっと想いが通じ合っているから、きっとこれからもやっていけると思う」
俺は、皆に話した。きっとこれからも大丈夫なのだと。
この想いを、大切にしていきたいと感じている。
〈想いのカ・ケ・ラ 完〉