阪南がリビングにやってきたのは、俺が家に入ってから30分後だった。阪南は家にやってきた俺に対しての一言は「どうやってきたの?」だった。まあ、阪南から住んでいる家の場所を聞いていないので、まあそうなるのも理解ができる。
とりあえず、一言二言交えてから阪南の母は、リビングから出て行った。今、ここにいるのは阪南と俺だけだ。
「あの……ごめんね」
最初に口を開いたのは、阪南だった。多分、謝る理由は一つしかないだろう。
「もしかして、遊園地での事か?」
「うん……本当なら、その時点で事情を話しとかなきゃいけなかったんだけど、何も言わずにただ取り乱して逃げるように帰っちゃったから……」
そう、彼女は顔を俯けながら、淡々と答えた。
「……いや、俺も阪南に無理言わせようとしたからお互いさまだ。そんな気に病む事はないんだ」
「うん……」
一瞬阪南は顔を上げて無理に笑みを作ったが、すぐにやめて横を向く。この気まずさはなかなか堪える。
「あのさ、俺」
俺は、思い切って口にする。
「……俺、阪南と出会ってから毎日が変わったような気がしたんだ。阪南がいなかったらできなかった事いっぱいあったんだ」
俺は一生懸命、言葉を紡ぐ。手探りで、本当の気持ちを言葉にして組み立てていく。自然とうまくつながっていった。
「それに、阪南に友達が出来ただろ? 最初は色々トラブルとかあったけど、皆なんだかんだ、阪南と一緒に居てくれたんだ」
だから、せめて今は阪南と共に学校生活を送りたい。俺達はただそれを伝えたい。
「ありがとう……でも、ごめんっ。やっぱり私、向いてなかったんだよ」
何に。何に向いていなかったと言いたい。心の底から言ってやりたい。
「私、なかなか友達できなくて……強引な所もあったし、迷惑もよくかけたし……やっぱり私が本当の友達を作るなんて無理だったんだって……」
すこしずつ声音は泣きも混じっていくものになっていった。俺は、必死にこの想いを伝えたい。でも、どうやって? いや、もう答えは見つかっている。
「俺だって、そう思ったんだ」
「……え?」
阪南は顔を上げる。驚いた顔で。
「俺は……幼稚園の頃に、仲の良かった友達を失くしたんだ」
それは、俺にとってとても辛い過去だった。
でも、阪南を引き留めるにはこの話をするしかなかった。
だから、俺は話したのだ。この事を――