「――それでは、阪南さんの自宅はここになるのでどうか宜しくお願いします」
俺は、職員室で先生経由の電話で、阪南の母から直々に迎えてくれると言ってくれた。先生に事情を話してなんとか教えてもらう事が出来たのだ。
「それじゃ、阪南さんの事頼みましたよ」
大きく頷いた後、俺は扉を開けて「失礼しました」とちゃんと言ってから、職員室を出て行った。職員室の扉を出ると、廊下の前で皆が待っていた。
「あの、聞けましたか?」
御崎さんが聞いてきた。俺は、ちゃんと先生に事情を説明したら教えてもらえたという事をちゃんと話した。
「それでは、後は阪南さんと会うだけなんですね?」
「……まあ、そういう事になるな」
これから阪南に会う。一体どうやったらうまくいくのかは、誰にもわからない。けれど、やるしかない。この、『想い』を伝えるためだけに。
その後、俺たちは学校を出て行って、門の前でしばらく待っていた。しばらくして、阪南の母が現れた。
「あなたが、昌弘くん?」
阪南の母親は喋り方から、見た目まで、阪南と雰囲気が似ていた。ここに阪南がいたら俺は、一体どう思っていたのだろう。
「はい、そうです……これ一応先に渡しておきます」
そう言って俺は阪南の母親に学校から渡された連絡を渡した。彼女は快く、それを受け取った。
「ありがとね、わざわざ……それじゃ、家に向かいましょう……ああ、神子は多分家に来ても昌弘くんたちが来たとは思わないから大丈夫だと思うわよ?」
阪南の母の案内で、無事に阪南の家に着く事が出来た。
「ここが、阪南の家……」
無論、その家は感嘆を上げる程の豪邸でも無ければ唖然とする様なボロい……もとい古い家宅ではない。ごく一般的な2階建ての一軒家であった。名字の書いてある看板には「阪南」の文字がある。
「わざわざありがとね」
「いえ」
一言だけしか言えなかった。少し緊張しているのかもしれない。俺は大きく息を吸った。
「緊張、しますか?」
御崎さんは少し不安そうな様子だった。俺は、大丈夫だとだけ伝えた。
「それじゃあ、まず俺一人で阪南と話す。阪南のお母さん、ここだと思ったタイミングで御崎さんたちと阪南を会わせてください」
阪南の母は、わかったと大きく頷いた。