そうして休日はあっという間に消えてなくなり、月曜日が始まったのだ。

「おはよ! 昌弘君!」

 教室に入ると、阪南は元気良くこちらに声を掛けてきた。同時に周りの目線がこちらに向いた。その目にはどうみても哀れみであった。

「先週の金曜日、学校が終わった後あなたと会えなかったけどさ」

 金曜の事かと思ったが、ここで引っかかる。先週、一緒に帰宅すると阪南は言っていた。まさかとは思うが、そういう事なのでは?そして、その考え通り、話を切り出してきた。

「――――今日こそ、一緒に帰ろ!」

 そんな感じで、阪南と一緒に帰る事になってしまった。阪南と付き合うのはかなり疲れると先週、わかったばかりなので避けたい事がらなのだ。そもそも、先週なんとかして一緒に帰宅するのを回避してしまったがために、今日こうなったのだが。

 今日は早速授業が始まる日であったのもタイミングが悪かった。授業に身が入らないのだ。今日の放課後の事に気が滅入って授業に集中が出来ない。その原因である彼女は、のんきに小声でこちらに話をして、先生に注意を受けている。それが一回だけで済めば良かったのだがそれが今日だけで何十回もあったのだ。

 阪南のおしゃべり癖は普通ではないなという実感がとても湧き出てくる。まさかここまでおしゃべりなのか……ここまで来たら清々しい感覚になってくる。

 昼休みでも相変わらずだった。本当は一人で弁当を食べるつもりだったのだが、その時阪南が席をくっつけてきたのだ。
 一体何のつもりだと聞くか……と考える前に、阪南は「一緒に食べよう!」と断れない誘いをしてきたのでそんな事を言うまでもなかった。

「んで、昌弘君の声一回も聞いた事もないんだけど」

 唐突な事だった。結局昼食を一緒に食べたのだが、阪南は俺が一言も発さないと不服を立てたのだ。
 
「ね、折角だから声を聴きたいんだけど……と言いたいけどもし声にコンプレックスがあったら失礼だよね……」
 
もう言っているが。まあコンプレックスがあるかもしれないという考えはあって良かった。ただ、俺の場合は声にコンプレックスは無い。

「……あ、でも聞いていたかも。 小さい唸り声とか」

 そんな細かい事はどうでもいいのではないのかと思うが、阪南にとってそこはとても重要なポイントなのだろうと思う。

 ただ、それとこれとは話が別である。恐らく今日は付いていくだろう。そして、そのまま家に入ってくるということも考えられる。

「あ、そうだ」

 阪南がまるで思い出したかのように口を出してくる。

「今日こそ昌弘くんと一緒に帰るから!」

……やはり、俺の予想は当たっていたようだ。

「……!」

 俺は、阪南の弁当の方を見た。まったく手をつけていないわけではないが、半分は手を付けていない有様であった。俺は、阪南の肩をつつく。ちゃんと反応したため、次に弁当に指を指す。

「……あぁ! お弁当、まだこんなにある!」

 阪南が慌てて食べ始めた隙に、俺は残り少ないおかずやご飯を食べきる。次にお弁当箱を片付けた。そして、その場を逃げるように後にする。

「○★7△~! ☆♪ZД∞◇!?」

 阪南が口に食べ物を含みながら何か叫んでいる様子だった。というより、食べ物がない状態で話せと突っ込みたい。しかし、口に出す勇気は無い。仕方ないので自分のカバンの方に行き、ノートを取り出す。このノートは今日の朝に結局買ったけど使わなかったノートから探したすこしお洒落なデザインで小さいサイズのノートだ。