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「ただいま~……」

 家に着いた私は、ドアを開ける。大体私が帰る時間は鍵が開いている。何故なのかというと親がいちいち開けるのが面倒くさいらしくて、それで私が大体帰ってくる時間帯は鍵がかかっていないのだ。

 大胆に行動するよねと思う。そんな危険な橋を渡るのもお母さんらしいといえば、らしいのだが。

「おかえり~」

 お母さんの声だ。私は早速リビングの方に向かう。

「……そうだ、神子に言っとく事あったんだ」

「え?」

 お母さんが珍しく、私に話があると言う事だ。その顔つきはいつものお母さんのものではなかった。いつもお母さんはだらけてる感じで、結構のんきな顔つきなのに、その時はとても真剣な眼差しでこちらを見ていた。

「なに? ……」

 こんなお母さん、珍しい。珍しすぎて、逆に不安になってくる。一体、お母さんは何を言いたいのか、わからないから余計に不安だった。

「神子、10月から北海道に引っ越す事になったの」

「…………」

 私は絶句した。突然の事に戸惑いを隠せない。

「ちょ、ちょっと待って! 何で突然⁈」

「それがね、お父さんが会社から指令を受けて、北海道に転勤する事になったからなの」

 そんな……私は、どうやって言えばいいのかわからなかった。今日は、商店街の喫茶店で昌弘や夢ちゃん達と一緒に夏休みに遊びに行くために話し合ったのに、突然そんな事言ったら困惑するのに、どうやったら。

「そんな……やだよ、私……」

「……大丈夫、大丈夫だから」

 お母さんは私を慰めようとしている。けど、私にはそんな慰めほんの一時しか意味がないのに。

 こういう時、私どうしてたっけ?

――想いを伝えたい、でもどうしたらいいの?