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 それからは、何もない日常だった。変化があったと言えば、

「昌弘~! アッキーや美代ちゃんが一緒に食べれるらしいって! あそこ行こ!」

「……昨日も一緒に食べなかったか?」

「んもお! 別にいいじゃん! さ、行った行った!」

 阪南は俺を急かしてあの場所に連れていく。そこは、田月や御崎さんをくっ付ける事が出来た、あのグラウンドの広場だった。

「あ、今回もう二人来るんだった!」

「……誰?」

「田月くんと夢ちゃん‼ 夢ちゃんが、気になって一緒に来ていい? って言ってくれたの!」

 そこに田月が入っているのは、その説明では不十分だろう。一体田月はどこから出て来たのか。阪南は次の言葉を出す。

「田月くんは、夢ちゃんの付き添い‼ なんか、心配なんだって簡単に言えば」

 簡単に言えばって一体何なんだよ。というか俺の心を読んだ様に気になった事を話してきたな。

「お、お前ら今日もか?」

 そこに、ややこしいのが。拓海が俺達を見て、ニヤリとした顔つきで声を掛けてきた。

「そそ! そういうわけで、じゃあ!」

「おう! あ、昌弘に話あるからちょっとだけくれよ」

「いいよ!」

 俺は物じゃない。そして阪南は即答するな。阪南は俺が言う間も無く、教室から出て行った。

「……にしても、お前の周囲変わっていったよな……少しお前らの事噂になってるぞ」

「……ッな⁈」

 驚いた所で、理由を探る。そういえば、あの口論は結構生徒間ではかなり噂になりえるような事だった。証拠に、野次馬がたくさんいたのだから。……ということは。

「‘救世主’だってよ。お前らの事」

「……微妙にニュアンス違うんじゃないか? それ」

 確かになと拓海が笑う。まったく、能天気でいいな。

「じゃ、行って来いよ。阪南とか待ってるだろ」

「……ああ」

 そう答えて、教室から出ていく。教室にいるクラスメイトは俺達に目もくれず、何人かで何かを話し合ったり、ふざけあったりしている。

 俺も、似たような……いや、同じ事をこれからするのだと思った。手に持っている弁当箱を見て、なんとなくそう確信した。

 これからあのグラウンドには阪南が待っている。いや、阪南達が待っている……という事なのだろう。

 思えば、こんなことをしていたのだろうか。記憶の中を探りあてる。そういえば、一度も無かったような気がしてきた。多分、俺にとってはこういう経験は新鮮なんだとなんとなく、そう、なんとなく、そう思った。


〈第3話 完〉