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 今日の放課後も阪南に付いて行かれ、家に着くと母にニヤニヤとされながら、部屋の中に入っていった。こんな事を見慣れた光景に絶対したくない。

「じゃ、早速作戦会議しよっか」

「…………今度はどうするんだ?」

 俺はそこが気になっていた。ノープランで話し合いをした結果、何も案が出ず終わってしまった昨日の事があったからだ。しかし、阪南はそれを聞いた時ニヤリとした顔で堂々と宣言をした。

「今度は状況を整理してからどうするか決めるんだよ!」

 これを聞いて、思わず言ってしまいたい事があった。

「何で、俺達こんな簡単な事に昨日気づかなかったんだ……?」

 しばし、無言が続いた。昨日はそんな状況の整理すらまともにせず、ノープランで話し合いをした結果、何も案が出ず終わってしまっていたのだ。しばらくして阪南が「まあ、それは置いといて」と重い唇を開いて無理やり話題を戻す。

「まず、2人の状況はどんな感じだっけ⁉」

「……簡単に言えば一触即発な状況だな」

「そうね‼ それなら……」

「二人を落ち着かせて話させたらいいんじゃないかな⁉」

阪南は立ち上がってそう宣言した。それだけじゃ、こちらにはどういう事かわからなかったので、続きを引っ張り出す事にする。

「……というと?」

「要は、二人ともイライラが重なっているから、落ち着かせるように場所を移動するのよ! そうしたら二人とも冷静になれるから、ちゃんと話し合えるんじゃない⁉」

 俺から見たら、悪くないアイディアだった。問題はそれをどうやって実行するがだが……。

「どうやってやるんだ?」

「う~ん……そうねぇ……まず、二人を放課後に呼び出して街を散策するっていうのがいいんじゃない?」

「でも、どうやって」

「私達二人で朝の口論に割り込んで、一緒に行こうと言うの‼」

 なんて突拍子もない事をしなければならないんだ。朝の口論の輪の中に突っ込むのは、リスクが高すぎるだろ。

「それぐらいしか二人が集まる機会無いんだから、ね?」

 ……阪南は同意を求めている。俺が彼女の作戦に協力するか、しないか。今俺は問われている。

「……もし、同意ができなかったら?」

「その時は、一人で行く」

 ……阪南がうまくやれるかが心配だった。どうやって説得して、二人が冷静に話し合えるまで街中を歩き回れるか……。

 ここで同意ができなかったら、果たしてどうなるのか?それなら、俺は……

「……行くよ」

 同意をする。阪南はとびっきりの笑顔で、「じゃあ、明日7時30分に!」と言った。