話し合う場所はまずほとんどないし、かといってここ2週間で二人が偶然出会うポイントは朝しかなかった。まず、どうやって実行するかが問題だ。
「……ねぇ、何かない?」
少し退屈そうな様子で聞いてくる。お前が始めたのだから少しは責任もって何か案を出してほしいのだが。
「何もないよ……お前こそ、何かないのか」
「私はない」
即答される。ないなら何故これをやっているのか。
「……今日は何も案が出てこないからここでやめる?」
「……やめとく」
あっさりと数十分が無駄になった。この流れで阪南は帰る事になるが、母に「女の子一人じゃ危ないと思うから昌弘も付いていけ」という趣旨の事を言われ、送る事になった。
「いやぁ……昌弘のお母さん優しいね」
「…………あれは、ただ単に勘違いしているだけだから気にするな」
阪南は疑問の意を表する。やはり気づいてないか。まあ、家での態度を見る限り母が思っている関係に気づいていないのはわかっていたのだが。
「あれ? 先輩方、偶然ですね」
すると、声がかかる。その声を発したのは、秋だった。
「あれ? アッキー、今帰り?」
「はい、そうです……それでお二方は?」
俺は答えようとノートを取り出し、書き込もうとするがその時、阪南が俺の腕をがっつり握って耳打ちをする。
「秋には作戦会議の事内緒にしといて。アッキーの友達から聞いたんだけど、アッキーって演技出来ないタイプっぽいから知ったらそれを意識してやっちゃうと思うの」
なるほど、演技が苦手なタイプなのか。なら、これしかない。
『ちょっと阪南が家に遊びに来て、帰り送ってる所』
「……二人って仲いいんですね」
勘違いされてないだけいいか。俺は普通に仲が良いと頷いた。
「そういえば、秋の家ってどこにあるの」
阪南が疑問を話す。秋は少し悩んでいる様子だった。すると、どうするか決めたのか、
「僕の家は、あちらの方向にあるんです」
そう言って秋は橋がある方を指す。割と学校から遠くないその橋の先に家があるという事を言っているようだ。
「ふ~ん、途中まで昌弘と同じ帰宅路なんだね!」
「まあ、そんな感じです。では」
そう言って手を振って秋は橋の方に向かって歩き去っていった。俺達も彼が手を振るのをやめるまで振った。
「……じゃあ、帰ろっか」
手を振るのをやめた俺達は阪南の家の近くまで歩いて行った。