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「着いたね~! 昌弘の家ってこんなに静かでいい場所にあるんだね!」

「少しうるさいから静かにしてほしい……」

 阪南が言う通り、俺の家近辺は静かだ。ニュータウンに俺の家は、緩やかな坂の途中にあり、家の真正面には対比であるように公園がある。その間には車1台分が通れる道路と歩道がある。

「それじゃ! 早速お邪魔しま~す」

「おい、何自分の家の様に入ろうとしてるんだ」

「でも、ここ昌弘の家だから大丈夫だって」

「いや、俺の両親が突然の事に驚くだろ俺が先に行くから」

 そうやって俺は阪南を自分の後ろにおいやってイヤホンを鳴らす。少し不服そうな表情をしているが、スルーして応答を待つ。

『は~い……あっ昌弘?』

「ああ、……ちょっと友達連れてきた」

 応答してきたのは、母だった。母にはそういったのだが本当は、付いて行かれたという方が正しい。

『本当⁉ じゃあ、開けるわね‼』

 喜びの声を上げ、母はドアを開ける。

「あっ、こんにちは!」

「こんにちは~! 昌弘、まさかこんなに可愛い女の子連れてくるなんてっ」

「うるさい……」

 母は小声で俺にだけ聞こえるよう耳打ちをしてきた。そんな細かい事言われても、困るといえば、困る……。

「お邪魔しま~す」

 すると、阪南が真っ先に俺の家に上がり込んでいく。俺もすぐに家の中に上がり込んでいった。

「ちょ、ちょっと待ってくれそんなに案内なしに入らなくても」

「え? どうしたの? ……まあ、いいけど」

 すぐに入られて本当に慌てたが、なんとか立ち止まって安心した。しかし、次の発言が俺を困惑させてくる。

「昌弘のお母さん、昌弘の部屋ってどこですか?」

「あら~……? ……2階の昌弘の部屋と書いてある扉の所よ」

 母は凄い機嫌のいい顔で、俺の部屋のある場所を教えてきた。そういう事ではないから、その顔はやめてくれ。

「2階ですね! ありがとうございます!」

 阪南も阪南で、それを聞いた後にすぐ階段を駆けあがっていく。

「ちょ、ちょっと待て」

 母さん、覚えてろ……! そんな事を思いつつ、部屋までたどり着いてしまった。部屋の前にいる阪南が扉を開け、

「さあ! 作戦会議はじめ~!」

 大声を上げる。大声上げたら外にも良く聞こえるからやめてほしい。



「では、ごゆっくり……ふふっ」

 部屋から出る時に母が少し笑った。俺はその様子を見て違うと言いたかったが、阪南に聞かれたら面倒なので、スルーする。

「じゃ! 昌弘のお母さんがジュースとクッキーを運んできてくれたし作戦会議開始だよ!」

 阪南の一声で、作戦会議が始まる。

「今日は、二人をどうやって和解させるか、話し合いましょう‼」

 と言われても、一体何をすればいいのか見当が全くつかない。実際、数十分はどちらからも案が出る事も無かった。向こうも同じだろうが、そもそもどうやったら和解させられるかが問題だった。