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「……んで、お前の隣の席は阪南だったわけか」

 俺は拓海にそうだという様に首を縦に振る。入学式が終わった後、拓海に声を掛けられたのだ。その際に、拓海がクラスはどこだったか、隣の席の奴は誰だったかを聞いてきたため、俺はノートにクラスと阪南が隣の席だったという事を端的に説明した。

「そりゃあ大変だな!」

 しかし、拓海は完全に他人事のような様子でムッとする。その表情を見た拓海は、

「悪い悪い、冗談だって」

 俺は表情を戻そうとするが、

「お前って結構顔に出るよな」

 と言ってきたため、結構腹が立った。その様子を見た拓海は、

「わ、悪かったからその顔で見ないでくれ」

 と遠慮がちに言った。正直、そんなに怖い顔だったのだろうか。

「にしても、お前何か書くもの買ったらいいんじゃないか?」

拓海は突然俺に提案してくる。それはどういうことかと顔で見せる。すると、拓海は

「……いやぁ、何というか口で出すのがダメなら書いて伝えたらいいんじゃないかなって思った訳なんだ。 無理とは言わないけどさ」

 なるほど。それはなかなか良いアイディアだと思った。俺は拓海に感謝の気持ちを出すために、グッドサインを出す。

 拓海は別に良いと気楽に笑う。彼も無口な俺の事を友達と思ってそう提案してきたのかと初めて思った日でもあったような気もする。すると拓海はハッとした表情になる。

「……おっと、今日は早めに帰らないといけなかったんだ。 なわけで、俺帰るわ!」

 拓海は捨て台詞を吐く様に駆け足でその場を去っていった。恐らく何かしらの用事があったのだろうと察しておく。

俺も、帰路に着こうとする。その時に不意に見えたのだ。
 
「……!」

 阪南がいたのだ。今は気づいてないが気づかれるような事をしたらまずいと思い、見なかった事にしてそのまま歩いて行った。

もしかしたらこちらの後を付けてくるのかもしれない。厄介な事になってしまったと実感する。

 あまり知らない相手に付いて行かれないように帰れなければ安心ができない。俺は気づかれないように身を隠した。

 そして、彼女が気づいていないかを改めて確認し、急いでその場を走って後にする。

 まだ油断はできない。何かしらの拍子で見つかってしまうかもしれないかもしれないので、走る速さを上げていく。無我夢中に走っていたのでどこを走ったのかは覚えてなかったが、段々と学校から遠のいている事はわかったような気がした。

 結構な距離を走ったと感じた。俺は丁度いい場所で足を止めた。結構全力で走ったので息が切れ切れだった。

息を整えて、後ろを確認する。そこには阪南の姿は無く、俺はホッと息を吐く。