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 授業の終了を告げるチャイムが鳴る。授業は礼で始まり、礼で終わる。それはどの学校でも同じ事だ。これで4時間目が終了したので、昼休みだ。

 授業が終わった後は友人数人と集まり、弁当を広げて共に話しをする。話はどれもこれも他愛もないものだ。僕はいつも食べるのが早い方らしく、今日も一番に食べ終わった。

その後僕は、少し友達にトイレに行くと言って、廊下に出る。そのままトイレの方に向かう時に、それが起きた。

 誰かとぶつかった。僕は慌てて「すみません」と言い、手をその人の前に差し出す。

「……ったぁー……あ、ありがとう!」

 女子だった。身長は割と低い方で、顔はとても愛らしさに満ちていた。彼女は、僕の差し出した手の上に、自分の手を置く。僕はそれを引っ張り上げる。

「ありがと‼ ……君って1年生?」

 彼女は、僕の下の方を見て質問する。僕は、その質問で彼女が先輩だという事に気づく。よく見ると、学年を区別するためのスリッパの色が違う。色は、2年生のものだった。

「せ、先輩だったんですか……?」

「あ~‼ そうじゃないと思ったな~⁉」

 少し不満を表情に出しているが、口調自体は割と明るい。だが、声が大きめで周りに居た数人の同級生の視線を集めている。

 僕が返答に困っていると、

「君、後輩みたいだし今すぐ私と付き合いなさい‼」

 面倒な先輩だと感じた。先輩と思われなかったからっていきなりそれとは。

「さあ‼ さっさと私に付いてきなさい!」

 彼女は僕の手を引っ張ってどこかへ行こうとする。少しは抵抗したのだが、その抵抗を受け付けないぐらい彼女の力は以外と強い。

 それが先輩、阪南神子との出会いだった――