『何も会話が来ないから、何か話してやってくれ』
少し呆れるような表情をしてくる。お前がやれと言ったのに、その態度はどういうことか。
「やるから、……ちゃんとね?」
まあ、結局はやってくれることにはなったのだが。そして阪南が会話に入る時、スムーズに話が広がっていっていた。最初の方は田月に少し怪しまれたりもしたが、それ以上の詮索はされる事も無かった。
その内に、俺は弁当を食べ終わらせる。後は、阪南を連れていくだけだ。俺は阪南を呼び出し、要件を話す。
『阪南、ちょっとトイレとか行くか?』
「……うん?」
そういえば、阪南には伝えていなかった。
『あれだよ、何か理由をつけてその場から離れて二人きりにさせたりするんだ!』
なるほどと納得いったようだった。早速それを実行する。
「ごめ~ん! ちょっとトイレ行ってくるね!」
「え、ちょ、ちょっと待ってくださ……」
「お、俺も行ってきます……」
俺達二人は足早にその場から去っていく。これで、二人きりにさせる事に成功しただろう。
それから俺達は二人から見えない所に移動して、様子を窺う。二人の様子はと言うと、特に変化は無く無言の状態が続く。
「いつ、進展するの……?」
昼ごはんを食べ始めて20分程だろうか。昼休みが半分程終わっているのだと言うのに、どちらも行動を起こさない。
「そろそろ戻った方が良いかな?」
そんな懸念も聞こえる程だった。二人きりにさせるのはまずかったか? ……そんな事を考えていると、御崎さんの方からその会話が始まる。
「……あの、今日は突然すみません」
最初に謝罪から始まった言葉。このまま話がどう進むのか、緊張が走る。二人にばれないように様子を見続けている。
「……別に、問題ないです」
「その、……一つ言いたかった事があるんです」
まさか、好きだと言うのか。こんなにも早く。
「あの時、私のペンダントを渡してくれた事で、お礼を言ってなかったんです……覚えてないかもしれないですが」
「……? ああ、そういえばそんな事ありましたね」
俺達の知らない話に入る。どういうことか一切聞かされていないと思った。しかし、このままこっそり見続けていていいのだろうか? しかし、一度は戻らないといけないとは思うので、どうするか検討がつかない。
「あの、……あの時はありがとうございました……!」
御崎さんは田月に、感謝の言葉を述べる。田月は少しそっけない様子で
「……別に、当たり前の事をやっただけなので」
言い方が少しきつい。元々彼はそんな人間だと言う事は、拓海の情報から聞いていたので、わかってはいるのだが。
「……あのっ!」
突然、御崎さんが田月に接近していく。一気に距離が近づいている。
「私、言いたい事があるんです……」
「……どうする?」
『……行くか、適当な時間に戻ろう』
俺達は、そのまま二人のいるその場所を後にした方が良いだろうと、察しした。数分したら戻る事にして。