そんな朝の時間を経て、2時間目終了後の休み時間。阪南は俺を連れて、御崎さんや阿須和さんと昨日の続きをどうするか聞きに行く事にするらしい。

 やっぱり俺もセットかと思ったが、彼女が彼女なので、逃れるのは難しいので、ついていくしかない。

「じゃ、2―1行こっ‼」

 阪南はそのまま2―1の方へ駆け出していった。やれやれと思いつつ、俺も後を付いて行った。

「やや、神子ちゃん」

「ゆいちゃん、やっほー!」

 そんな挨拶だった。たった一日でここまでかしこまってない挨拶ができるのは凄いと、素直に関心した。

「あ、……神子ちゃん」

「夢ちゃんも、やっほ~!」

「今日はアレ? 昨日の続きと言う感じ?」

「そそ、それでね……」

 まさに、女子の会話という雰囲気だ。少なくとも、俺が入りこめる余地は無い。ただ、俺が3人の会話を眺めているという何ともアレな光景に近いかもしれない。

「あ、そうだ。昌弘―!」

 と、阪南が思い出した様に俺を呼ぶ。何だ?とジェスチャーすると、

「とりあえずこっち来てー!」

 そう返してきたので、3人の輪の中に割と自然に入り込むことになった。傍らから見れば、そうではないかもしれないけど。

「折角協力者呼んできたのに、蚊帳の外なのはもったいないよね~」

 さっきまで俺の存在を忘れていた様に話し込んでいたのに、何言ってるのやら。そんな皮肉口が出てきそうだった。

「だね、神子ちゃんが呼び出したもんね」

 いや、正しく言うと俺は巻き込まれたと言った方が正しい。『知らない内に協力する事にされていた』……この言葉がぴったりなぐらいには。

 無論、その事に気づいていない阪南は、何も言及しない。御崎さんは、話の流れ的に気づく事が難しい。言うまでもないが俺が無口な性分であることを利用した阪南が、無理やり協力すると言ったと御崎さんに言ったから気づけないとは思う。

「あ、もうさ清々しくいかない?」

「えっ、清々しく……? どういうこと?」

 何か、阪南が思いついたようだった。この話し合いの明暗を分けたその答え、それは――

「いっその事昌弘くんにまかせて――」

 ……という流れで、この後の昼休み、俺が御崎さんと田月をくっ付けるため、昼食を一緒に食べようと誘う流れになった。

 他の二人もそこまで清々しく行くならもう流れに身を任せるムードになっていき、必然的にやらざる負えなくなった。

 こんな大役を何故任せられるのか。何よりも、自分が言葉を発さなければならないという状況がより気を進ませられない。

 授業中、そればかりが耳に残る。周りのクラスメイトは割と集中して聞いているのと、聞いてないやつが半々ぐらいに見える。そして、隣の席の阪南はと言うと……ぐっすり寝ている。

 ここ1か月、彼女の行動により、波乱の中学2年生活を送るようになったが、どこか引っかかり、そして何故か少し気分が良くなっていたような……そんな気分に包まれていた事もあったが、今回は流石にきつい。

 しかし、今回は他人の恋が絡んでいるのだ。失敗や放棄はとてもではないが無理だ。もう、やけにでもやるしかない。

 そんな決心が、俺の心の中で大きくなっていた。

 そんな事を考えていたら、チャイムが学校中を鳴り響かせる様に流れる。クラスメイト全員が起立した後に礼をして4時間目の授業は幕を引いた。

「……じゃあ! 任せたよ、昌弘くん!」

 またくん付けに戻して阪南は俺の背中を押そうとする。張本人なのにそれでいいのか……?しかし、逃げるわけにもいかない。俺は決心して田月に話しかける事にした。

 田月と話すために席を出る。田月が少しずつ近づいて行っている。プレッシャーがかかるが、思いっきりて声を掛ける。